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May 31, 2005

Ejovi Nuwere (イジョビ・ヌーワー)氏の第3回口頭弁論準備書面

平成16年(ワ)第24723号 損害賠償請求事件
原 告 Ejovi Nuwere(イジョヴィ・ヌーワー)
被 告 国

原 告 準 備 書 面(1)

2005年(平成17年)5月27日

東京地方裁判所民事第37部合A係 御中

原告訴訟代理人弁護士 清  水   勉

第1 被告準備書面(1)に対する認否反論
1 第1−1について
「パクセック実行委員会」(3頁7行目)から「通知した(乙第2号証)」(18行目)までは不知。
「なお」以下は否認。

2 第1−2について
不知。

3 第1−3について
不知。

4 第1−4について
(1) (1)は認める。
(2) (2)は不知。
(3) (3)アは概ね認める。
(4) (3)イのうち、財団法人地方自治情報センター(LASDEC)(以下「LASDEC」という。)が住基法30条の10第1項に定める指定情報処理機関であること、佐藤公成がLASDECの職員であり、2004年(平成16年)11月12日午後に本件セミナー会場にいたことは認め、その余は不知ないし否認。
 (5) (4)アのうち、室内に内田、原告、ジム・クテニコフがいたこと(10頁20〜22行目)は認め、その余は不知ないし否認。
 (6) (4)イのうち、クテニコフが旧講演資料を佐藤に示して、「これのどこがいけないのか」と質問したこと(10頁24〜26行目)、佐藤が、総務省はこの資料の最後の4枚を削る方法で講演することは差し支えないと述べたこと(11頁2〜3行目)、講演資料を配布する方法ではなく口頭で説明するだけではどうかと原告が提案したこと(11頁5〜6行目)は認め、その余は不知ないし否認。
 (7) (4)ウのうち、内田が原告に対して、新講演資料の内容について問題があることを指摘したこと(11頁25〜26行目)、ペーパーなしの講演でも口頭でこのような問題点い触れるのであれば講演を認めるわけには行かないと言ったこと(12頁2〜4行目)、佐藤が午後2時40分ころ退席したことは認め、その余は不知ないし否認。
 (8) (4)エは否認。
 (9) (5)は不知ないし否認。

5 第2−2について
 (1) (1)は否認ないし不知。
 (2) (2)は否認。
 (3) (3)は否認ないし争う。

第2 原告の主張
1 住基ネット侵入実験が行なわれるに至る経緯
(1) 既存住基システムのインターネット接続
長野県本人確認情報保護審議会(以下「長野県審議会」という。)では、2003年(平成15年)1月から県内市町村に対して住基ネットに関するアンケート調査を行い、さらに県内各地十数ヶ所の市町村に出向き聴き取り調査を行い、これらの結果を踏まえて、同年5月28日、『長野県本人確認情報保護審議会第1次報告』(甲17)を公表した。
同報告において、県内市町村の住基ネットの管理の実情や県内市町村のなかに危険性のあるネットワーク接続をしているところが数多くあったこと(甲17−2)などを理由として、個人情報保護の観点から、県が一時的に住基ネットとの接続を止めることなどを提案した。
これに対して、総務省(市町村課)は批判的見解を明らかにした。

(2) 公開討論会
 同年8月5日、都内で長野県審議会と総務省の住基ネット調査委員会との公開討論会が行なわれ、長野県審議会側から住基ネットの侵入実験を提案し、総務省側の安田浩東大教授(元NTT理事・情報通信研究所長)は「安全性を確認するという意味でやってみるのはよい」旨の発言をし、侵入実験を行なうことに関する双方の合意ができたと思われたが、井上源三・総務省市町村課長は、上記公開討論会の直後の記者会見において、侵入実験を行なうことに否定的見解を述べた。
 その後、総務省と長野県が共同で侵入実験を行なうという提案は実現しなかった。

(3) 住基ネット侵入実験の実施
 長野県では独自に侵入実験を行うことを決め、不正アクセス禁止法に抵触しない範囲で、当該市町村の管理権限の領域内について当該市町村の同意を得た上で、9月22日から県内阿智村で住基ネットの侵入実験を開始した。侵入実験の開始は翌23日には報道各社に知られ、24日には各紙で報道されるに至った(甲12)。
 長野県が侵入実験を開始したことを開始直後に知った総務省市町村課は、直ちに、侵入実験に携わっている者がだれであるかを長野県に問い合わせ、対応した職員から、原告がそのひとりであることを聞いた。
 したがって、このとき以降、被告は、長野県の住基ネット侵入実験に原告が関わっていることを知っていた。
 報道機関は社によって異なるようであるが、例えば、同年10月2日付け日経新聞(甲13)や翌3日付け中日新聞(甲16)では「米国の著名なセキュリティー専門家」と報道しており、当時すでに原告を特定していた可能性がある。

2 被告が原告を知った時期
 長野県としては当時、原告名を公表していなかったが、総務省の実情としては、2003年(平成15年)9月23、4日頃には、原告が住基ネットの侵入実験に関与していることを知るに至っていた。
そのような関係から、総務省は、パクセック実行委員会から提出された本件セミナーのプログラム(乙1の8枚目)をみて、「Ejovi Nuwere」が長野県で住基ネットの侵入実験に携わった者のひとりであることにすぐに気づいたのであり、「実施者の一人が原告であることは公開されておらず・・・知らなかった。」(3頁23〜26行目)などということはあり得ない。

3 本件セミナーの特性
(1) 本件セミナー参加者の特性
 本件セミナーは世界的なコンピュータ専門家が集まり、発表討論する場であって、一般市民を対象とした初歩的な講演会ではない。参加費が2日間で14万円、1日で7万円(乙1の8枚目)というのも、一般市民向けでないことを示している。つまり、これだけの参加費を払う価値のある発表が行われ、かつ、それを理解できなければ意味がないのである。
したがって、その場ではレベルの高い報告と議論が行なわれることが予定されているのであって、報告者の報告内容を正確に理解できないような者が参加することは全く予定されていない。

(2) 原告の置かれていた立場
 原告は、本件セミナーで発表する予定の内容について、事前に長野県の了解を得た上でスライドを作成している。これは長野県との間で契約上、守秘義務を負っている原告として当然である。
また、侵入実験を行なった自治体との関係でも当該自治体に重大な迷惑がかからないよう対処すべきは、セキュリティー業務に携わる者として当然の責務であり、原告はセキュリティー専門家としてこのことを承知している者である。

(3) 正確な説明と正確な理解
 (1)、(2)を踏まえるならば、原告側が本件セミナーにおいて、長野県との間で締結した契約に基づく守秘義務に違反するはずがなく、他方、原告の報告を聴くセミナー参加者の知識レベルからして原告の報告を正確に理解できず、誤った理解をするなどということは考えられない。

4 総務省とSIDC
本件セミナーの主催者である株式会社エス・アイ・ディー・シー(以下「SIDC」という。)は、総務省を始めとする官庁などを顧客とするIT関連業務(情報セキュリティーに関する情報提供など)を行っている会社である。
SIDCの立場からすれば、自社の仕事を増やしてゆくために、世界一のIT国家を目指す政策の中心にいる総務省の意向を尊重する対応をとるのはほとんど必然である。

5 総務省とLASDEC
 被告は、LASDECの佐藤は「原告の講演内容について、総務省の意向等を代弁する立場にはなかった。」(9頁)と主張しているが、これは総務省とLASDECの関係を無視した建前論に過ぎない。
LASDECは総務省の外郭団体であり、その理事長は総務省の天下りであり、その主要ポストは総務省からの出向者によって埋められている。LASDECは総務省の意向に従って対応する民間団体であり、総務省とLASDECは、住基ネット問題に関して、いわば政治面と技術面とを分担した一体的な関係にある。
 LASDECは、住民基本台帳法上は、都道府県知事から住基ネットに関する権限の一部について業務委託を受ける立場(30条の10参照)でしかなく、市町村との関係では法律上何ら命令服従関係はない。
しかし実務の現状では、住基ネットに関する都道府県知事の権限内容が専門性の高いものである上に運用上のコストや手間などもかかることから、すべての都道府県がLASDECと業務委任契約を締結し、その権限行使をLASDECに委ねている。「委ねざるを得ない」というのが実情である。それを見越した上で、住民基本台帳法は「・・・できる」(30条の10第1項)という規定の仕方をすることによって、都道府県の任意性を装ったのである。
法律の条文上、任意性を装わせ、実際にはすべての都道府県がLASDECに業務委任をせざるを得なくさせ、総務省はLASDECという民間団体を通じて都道府県に指示し、また、都道府県を経由して市町村を指示しているのである。
このように総務省とLASDECは一心同体の関係にあり、全国の自治体は、LASDECの言うことは総務省の言うことである、という理解のもとに対応している。
LASDECの佐藤は総務省の意向を代弁する立場にあった者である。

6 本件資料に関する言いがかり
(1) 上仮屋専門官
 総務省側において主に対応したのは上仮屋尚専門官(以下「上仮屋専門官」という。)である。「専門官」という肩書きからして、上仮屋専門官は、本件セミナーが3に指摘したようなセミナーであることを十分に承知していた。

(2) 講演資料に関する言いがかり
旧講演資料(甲7、乙3)及び新講演資料(甲8)は本件セミナーにおいてただ配布されるだけというものではなく、原告が発表するときに各スライドについて原告自身が説明を加えることになっているものである。かつ、発表後には参加者と意見交換する進行になっているので、仮に原告の説明に不正確な点があったとしても、上仮屋専門官又は同人に代わる者(例えば、LASDECの佐藤)が本件セミナーに参加し発言することで、その誤りを是正することは容易にできた。
したがって、原告の説明を聴いている者に誤解を与えるおそれはない。
総務省の指摘はいずれも本件セミナーの特性を全く無視した極めてレベルの低い想像による、言いかがり的な非難である。
? 無線LANについて(被告準備書面(1)5〜6頁)
  総務省が問題視する写真は、住基ネットにおいて無線LANが使用されていることを説明するものではない。
当該自治体の執務室がオープンスペースになっていたこと、及び、多くのマスコミ記者が執務室内に押しかけていたことから、侵入実験を行なうのには適当な環境(静かで他者に妨害されない神経を集中できる環境)でなかったので、やむなく建物外から侵入実験を試みたというもので、実験環境の劣悪ぶりを説明するためのものである。
このことは、その直前のスライドで、「苛立ち」「マスコミ!!!」「限られたリソース」「限られた時間」「限られた情報」と書かれていること、身体を横にする場所も休憩場所も与えられずに仮眠している姿の写真をみれば、容易にわかることである。
? 「住基ネットワーク」について(同6頁)
  総務省は、ネットワーク図に住基ネットではない部分が含まれているのに図全体に住基ネットという表題が付いていることを問題にしている。
しかし、当該スライドは住基ネットを説明するための単なるイメージ図であり、「住基ネットとはこの範囲だ」と決め付けるためのものではない。住基ネットの範囲をどのように理解するかは住基ネットの何を問題として考えるかという問題の捉え方の違いであり、総務省のように、住基ネットとして設置した機器だけを住基ネットと呼ぶという考え方もあるが、個人データ保護の観点からどの範囲までを住基ネットの問題として考えた方がよいかという考え方もある。原告は、コンピュータセキュリティの専門家として、住基ネットのセキュリティを考えるとき、住基ネットと接続している既存住基システムを含めて考えるべきだという観点に立つ者である。
? サンプル画面について(同6頁)
  原告の説明がなされることにより誤解されるおそれはない。
  「村名」はすでに公になっている。仮に「村名」が出ていることが適当でないならば、その限度の指摘をすれば足りる。
 ? 「メソドロジー」(方法論)などについて(同6〜7頁)
   長野県が公表している報告書『住基ネットに係る市町村ネットワークの脆弱性調査最終結果について』(甲18)の範囲内で、かつ、長野県の了解の上で行なう説明であるから、当然、実験自治体に不利益を生じるような具体的な説明をすることなどあり得ない。
 ? 具体的な脆弱性の指摘について(8頁)
   ?と同様である。総務省は「住基ネットや市町村のシステムの信用を失墜させるものであり」と指摘しているが、ここに言う信用とはだれとの関係のどのようなものなのか。コンピュータセキュリティに関する信用であるならば、それは虚名ではなく、実態に基づくものでなければならない。コンピュータセキュリティの議論において建前論は無意味である。実情がどうなっているか。これが出発点である。本件セミナーは世界各地からコンピュータセキュリティの専門家たちが集まってきたというものであることからして、正確な説明をすることこそが議論の出発点であり、住基ネットの実情に相応した信用を認識するための出発点でもある。
 ? 住基ネットと庁内LANについて(8頁)
   ?と同様である。庁内LANの設定にセキュリティ上の問題があれば、それは庁内LANと繋がっている住基ネットのセキュリティにも影響する。住基ネットと庁内LANとを「区別」し「混同」をなくせば済むという問題ではない。

7 中止させられた経緯
 総務省とSIDCとLASDECの関係からすれば、SIDC関係者とLASDEC関係者が総務省の意向に沿って事態を処理しようとするのは当然である。
総務省は4枚のスライド(乙3の10枚目以下)の公表をしないよう求めた。これらの4枚は結論部分であるから、総務省の意向は結論の発表をしてはならないというものである。原告は、「結論なしではプレゼンテーションする意味がなくなってしまう。すべてスライドなしということでプレゼンテーションするのはどうか。」と提案したが、佐藤(LASDEC関係者)、内田(SIDC関係者)は「総務省は結論部分の発表は駄目だと言っている。だから、スライドなしでも駄目だ」と言った。原告が「それでは、私はまったくプレゼンテーションできないのか」と言うと、佐藤、内田は「私たちはキャンセルするしかない」と言い、ジム・クテニコフ(SIDC関係者)も「イジョヴィ。もし彼らがあなたのプレゼンテーションをさせないなら、あなたはキャンセルした方がいい」と言った。原告はやむなくキャンセルに応じた。佐藤、内田らは「すまない」(Sorry)というような言葉を一言言った。

8 総務省の圧力
総務省が原告に対して講演の内容の修正を求めたことは、それ自体、憲法で禁止する検閲(21条2項)に該当する。仮に厳密な意味でこれに当たらないとしても不法行為に該当する。
総務省は、原告の講演が中止になったことをマスコミからの取材で知ったと主張している(13頁)が、総務省自ら手を下さなかったとしても、LASDECとSIDCの関係者によって原告の講演が実現できなくなったことは、総務省の意向に基づくものであり、総務省の不法行為である。
以上

Posted by Gohsuke Takama on May 31, 2005 at 11:51 AM | Permalink | Comments (0) | TrackBack

May 23, 2005

Ejovi Nuwere (イジョビ・ヌーワー)氏の提訴-5月31日に第3回口頭弁論

アメリカのボストン在住のセキュリティエンジニアEjovi Nuwere (イジョビ・ヌーワー)氏により2004年11月22日に提訴された、総務省による表現の自由の侵害に対して起こされた訴訟について、被告である国からの被告の主張を提出した3月22日の第2回口頭弁論を受け、原告側の反論となる第3回口頭弁論が行われます。5月31日10:00amより今までと同じ東京地方裁判所705法廷です。

Posted by Gohsuke Takama on May 23, 2005 at 12:45 PM | Permalink | Comments (0) | TrackBack