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Jul 09, 2006

SWIFTからアメリカ政府への送金取引情報開示について、Privacy Internationalの苦情申し立て、全訳

6月27日、Londonを本拠地とするプライバシー擁護団体「Privacy International」は、国際的な送金を扱う金融取引組合SWIFTが、アメリカ政府に対して顧客の送受金情報を内密に開示していたことに対して,EUデータ保護指令に基づくEU加盟国での個人情報保護の法律に違反していた可能性が高いことから、32のEU加盟各国のプライバシーデータ保護監督官に苦情申し立ての書簡を送った。
原文は以下URLより。
http://www.privacyinternational.org/issues/terrorism/swiftlettercampaign.pdf

LA TimesによるSWIFTの記事
http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-na-swift23jun23,0,6482687.story?coll=la-home-headlines


Privacy Internationalによる苦情申し立て書簡の全訳:

Privacy International
6-8 Amwell Street London EC1R 1UQ, GB
http://www.privacyinternational.org

2006年6月27日

これは以下の国々のプライバシーとデータ保護規制者へに送られた苦情申し立てである: ベルギー、チェコ共和国、デンマーク、ドイツ、エストニア、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、英連合王国、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス、ガーンジー、ジャージー、マン島、オーストラリア、カナダ、香港、ニュージーランド


親愛なるコミッショナー

苦情申し立て:SWIFTから合衆国政府へ個人情報データの転送について

私は、最近公表された事件である、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunications (SWIFT)の関与している、EUと合衆国と他の国の国民に関係する個人情報の内密の開示活動について、苦情申し立てをここにしたためる。

このデータの開示は、表向きは対テロリズムの根拠の上に着手された。この開示は、ベルギーでのSWIFTセンターから合衆国までデータの大量の転送を含んでいる。そしてもしかすると、合衆国当局によって、ベルギーの中に保持されたデータと共に世界中のSWIFTセンターに収容されているデータに直接的アクセスが行われた可能性がある。この活動は、データ保護処置の下での法律上のプロセスを尊重することなく着手されたように思われる。そしてこの開示は、どんな法的根拠も、あるいはまったく権限無しでなされた可能性がある。この開示は、すべての場合において、データと関係する個人による認知あるいは同意無しでなされた。我々の知る限りにおいては、この開示活動は未だ続行中である。この活動の規模は何百万という記録に関与するため、この開示は合法的に公認された取り調べというよりは、むしろそれ自体を地引網的情報収集行為の領域に置くといえる。

この段階においては、我々は何人の人々が(今まで)これらの開示の対象になったかを確定するためには十分な情報を持っていない。しかし、このSWIFTの活動は、大量開示に関与する見込みが高いものである。ベルギー首相のオフィスはこれを確認した:「この件の協力者(SWIFT)は、何百万という記録のために、すでに広範囲な行政上の召喚令状(administrative subpoenas)を受け取っていた。」(3)

「行政上の召喚令状」とは、司法当局の関与なしに発行された書面という形式をとる。

我々はまた、このデータは、合衆国当局によって、広範囲のテロリスト関連以外の活動に対しても使われた可能性があることを心配している。この情報が何年もの期間にわたるすべての送金活動を描き出すように総計されることにより、この情報の追加の使用目的は、課税モニタリングやスパイ活動さえ含むものまで幅広く変化する可能性がある。

我々は、この行為の履行が本質的にデータ保護の法律に違反することを心配している。そして我々は、まだ法律上の評価が出ることが未決定の間はこの開示プログラムを一時停止するという視点において、あなた(コミッショナー)が介入することを依頼する。


本件苦情申立人について

Privacy International(略称 PI)は、世界の最も古いプライバシー団体の1つであって、近代的な国際プライバシー運動を設立することに尽力してきた。この団体はロンドンを本拠地とし、プライバシーと人権、市民的自由の監視団体として1990年に結成された。Privacy Internationalは、50以上の国で組織的なキャンペーンと主導的立場を持っている。Privacy Internationalのメンバーは30カ国から参加している。

本件苦情申し立ての背景

SWIFTは、金融業界が所有する協同組合であり、204の国と領土にまたがる7,863の金融機関に対して、安全で標準化されたメッセージ交換サービスとインタフェース・ソフトウェアを供給している。SWIFTの世界的な協力関係には、銀行、ブローカー、ディーラー、投資マネージメントなどと供に、支払い、有価証券、資金と貿易における彼らの市場インフラが含まれる。この組織では1年に約20億件の取引に関して認可処理の発生があり、その額はおよそ2000兆アメリカドルとなっている

2006年6月23日金曜日、「ニューヨーク・タイムズ」紙と「ロサンゼルス・タイムズ」紙は、顧客の金融活動データの合衆国政府への内密の開示に関する、SWIFTと合衆国の間の私的な取り決めのディテールについての記事を出版した。しかし合衆国政府とSWIFTのいずれもが、この開示の及ぶ範囲のディテールについて、情報提供する用意ができていなかった。(4)

「ニューヨーク・タイムズ」から引用する:「この記録は、合衆国内へと国外への、電信送金と他の方法による海外への金銭移動についてのほとんどに関わるものである。この国に対して制限されているもっとも類型的な金融取引は、大部分がそのデータベースにはない。」

「ロサンゼルス・タイムズ」による報道:「このメッセージは、典型的には名前と銀行顧客の顧客番号を含むもので、誰が資金を送っているか、あるいは受け取っているかについて、合衆国市民から大企業までを含んでいる。・・・[これは]財務記録を取得することについての伝統的な方法からの大幅な逸脱である。」

「ワシントン・ポスト」による観察:「現在と以前の対テロリズム担当の高官の発言によると、このプログラムは、先日報告された、国家安全保障局(NSA)による国際電話、ファクスと電子メールの監視と並列に機能するものである。この監視とは、テロリストとのリンクの嫌疑をかけられているとされる5,000人以上のアメリカ人に対し、令状無しで盗聴したものである。FBIによって通信と銀行業務記録を得るために活用される「National Security Letters」(裁判所命令の必要ない口外禁止召喚状)の使用の数百倍の拡大と共に、NSAと財務省の秘密プログラムは、テロリズム捜査とは関係がないと証明される多数の人々の私的な取引記録についての、今まで前例がない政府データベースを構築してしまったことになる。」

SWIFTは、この記事が出版された日の後半に声明を発表し、その中でこの開示が起きていたことを確認した。そして、テロ活動の資金調達の問題について当局と共に行動することへの、この組織における協力義務であることを根拠に、この行為を正当化した。(5)

SWIFTは多くの国にオフィスを持っている:合衆国、オーストラリア、香港、中国、シンガポール、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、南アフリカ、スウェーデン、スイス、英連合王国。そのデータが開示されたかアクセスされたのは、これらのSWIFTセンターからである可能性がある。


本件苦情申し立ての理由

この開示は、対テロリズムの根拠の上に行われた。この苦情申し立ては、国家安全保障あるいは対テロリズムの合法的な根拠上において個人情報を開示にするための措置について、その存在に挑戦しようとするものではない。そのような開示は、確立された法的手続きの適用を受けているに違いないものだからである。しかし、本件に関連するそのような手続きは、SWIFTあるいは合衆国政府によっては保証されたものではなかったと思われる。我々の視点においては、それ故にこの開示は非合法であり、停止がもたらされるべきである。

SWIFTからの声明がこれを裏付ける:

「これらの活動はすべて、国際的な法律顧問と合衆国の法律顧問からのアドバイスと供に着手された・・・」。

しかしこの声明は、取り交わされた取り決め、あるいは欧州連合(EU)の構成国家に与えられた通知について言及していない。我々は、これらの状況においては、この金融情報の合衆国への転送のための承認は保証されなかったと推定する。

「ロサンゼルス・タイムズ」からの報道によれば:

「米国財務省は、SWIFTネットワークからデータを集めることに際して、そのほとんど知られていない能力 − 行政上の召喚令状(administrative subpoena) − を使う。SWIFTは、メイン・コンピュータハブを含めた合衆国でのオペレーション施設を、Virginia州 Manassasに持っている。この召喚令状は秘密であり、たいていの犯罪の召喚令状と同様に、裁判官あるいは大陪審によってレビューされることがない。」

合衆国法の下では、CIAと合衆国財務省によってSWIFTの取引データベースをモニターすることは、煩わしい疑問を引き起こす。この(モニター)プログラムの細部が不明確であるにも関わらず、ある1つの事実はすでに確かであると思われる。それは、金融機関には明確に作られている合衆国のプライバシー法を迂回するように、合衆国政府の弁護士が慎重にこのプログラムを設計したことである。合衆国法の下では顧客に対するその役割と法的責任が未定義なままに置かれている、金融仲介業者に目標を定めることによって、この開示プログラムは、合衆国憲法修正4条によって提供されるものと類似の、銀行顧客に保護を与えるよう意図されている法律上の安全措置を避ける手段を追求している。これは米国議会の意図とは矛盾するものである。それは特に、金融機関が取引を完了するために彼らの持つ情報を第三者と共有することがあるからといって、合衆国国民が彼らのプライバシー保護を失うわけではないとされていることとは正反対である。最後に、この金融機関の監視は、どのような司法による監督も無いまま、選挙で選ばれた代表者にも非常に限定した通知がなされるだけの状態で起こったように思われる。


法律上の位置づけ

フォーブス誌(6)と他のメディアの情報源は、この開示プログラムはEU法の管轄外にあると説明する、EC委員会報道官の言葉を引用している。

「一目見ただけでも、このタイプのデータ転送を対象とするヨーロッパの法律がないように思われた...故に、それは国内法によるべき問題である。」

EC委員会報道官は加えた:「これがベルギー国内での場合であったら、関与するのはベルギー当局のはずであろう。」

ベルギー首相の報道官Didier Seus氏の発言の引用によると、SWIFTが情報アクセスをそのデータベースから合衆国当局までベルギーの裁判官の承認無しで提供したことにより、その行為が非合法にあたるかどうか、首相がすでに法務省に対して調査するように依頼していたという。(7)

「我々は、合衆国公務員がベルギーの裁判官の承認無しで私的な取引を見ることができたことの正当性にかかわらず、この場合における法律上の新分野が何であるのかを問う必要がある。」

Seus氏は、SWIFTがベルギーに本拠地を置き、また合衆国にオフィスを持っていたことから、この件はヨーロッパと合衆国の法律の両方によって統治されることを指摘した。

彼は、ベルギーにおいては政府当局は特定の取引を調べるためには裁判所に承認された個別の召喚令状を求めなくてはならないことから、これら行政上の召喚令状(administrative subpoenas)に従うことはベルギーの法律と互換性があったかどうか、ベルギー政府は裁定することを求めている、と発言した。

我々がこの申し立てを提出した理由とは、この問題は個人情報の不法な開示に関連していることと、あなたがこの苦情申し立てに基づき即座に行動をとられることを希望するためである。

敬具

Simon Davies
サイモン・デイビーズ

ディレクター

(3) 'Belgian leader orders bank inquiry', Dan Bilefsky, International Herald Tribune, June 26, 2006,
http:// www.iht.com/articles/2006/06/26/news/intel.php

(4) See USA Today coverage, 'Treasury chief defends global bank data tracking', June 24, 2006, at
http:// www.usatoday.com/money/industries/banking/2006-06-22-bank-records_x. htm

(5) See http://www.swift.com/index.cfm?item_id=59897

(6) 'EU says has no say over alleged financial data transfer to US via Swift', Forbes, June 26, 2006,
http:// www.forbes.com/work/feeds/afx/2006/06/26/afx2839449.html

(7) 'Belgian leader orders bank inquiry', Dan Bilefsky, International Herald Tribune, June 26, 2006,
http:// www.iht.com/articles/2006/06/26/news/intel.php

Posted by Gohsuke Takama on July 9, 2006 at 03:37 AM | Permalink | Comments (0) | TrackBack

Jul 04, 2006

Ejovi Nuwere氏の提訴、判決予定日

2006年10月3日10:00amより東京地方裁判所705法廷にて、Ejovi Nuwere氏が総務省を表現の自由の侵害で提訴した事件の判決が言い渡されます。

Posted by Gohsuke Takama on July 4, 2006 at 11:53 PM | Permalink | Comments (0) | TrackBack

Ejovi Nuwere (イジョビ・ヌーワー)氏の原告準備書面6

平成16年(ワ)第24723号 損害賠償請求事件
原 告 Ejovi Nuwere(イジョヴィ・ヌーワー)
被 告 国

原告準備書面(6)

2006年(平成18年)7月3日

東京地方裁判所民事第37部合A係  御 中

原告訴訟代理人弁護士 清  水   勉

1 はじめに
 被告の準備書面(6)では、原告準備書面(5)中の本件取扱要領第4条第4項第2号違反に関する主張のみについて反論しているので、この点について以下再反論する。
なお、原告は、原告準備書面(5)15頁(3)において、「本件取扱要領第4条第2号」と記述したが、「本件取扱要領第4条第4項第2号」の誤りであるので、訂正する。

2 「意見交換」ではない
被告は、「平成16年11月9日の指摘は、・・・高村課長補佐が、まずは事実関係や主催者の意向を確認する必要があると考えて主催者に連絡し、意見交換したものであり、これは本件要領4条4項1号に規定する注意を行ったものである。」と主張する。意見交換であって勧告ではない、というわけである。
しかし、被告の「まずは・・・意見交換」だったという説明は、事実関係として虚偽である。
意見交換というものは文字通り、お互いが対等な立場でそれぞれの意見を出し合い、お互いの考えを理解しあい、意見調整をしてゆく手法である。本件の場合、高村課長補佐と同人に呼び出された里吉、内田は対等な立場で意見交換する関係にはないし、そのような状況でもなかった。
高村課長補佐が里吉らに原告の講演内容について問題点を指摘したのは、原告が講演する予定だった11月12日の3日前の同月9日である。このような切羽詰った時期に、「まずは」「意見交換」をしようとしたということ自体、信じがたいのんびりした動きである。ここには講演者に迷惑がかかることへの配慮がまったくない。講演が実現できなくなっても知ったことではないという態度である。
被告は答弁書においてすでに、「訴外佐藤が、総務省はパクセック実行委員会が平成16年11月9日に総務省に持参した講演資料の最後の4枚を削る方法で講演するならば差し支えないと述べているという趣旨の発言をし」(5頁)という認否をしていた。11月9日の高村課長補佐の発言内容は一方的な通告であって、里吉らとの意見交換ではない。
そのことは、被告準備書面(1)の第1−2(5)(6)(5〜7頁)においてより一層鮮明になっている。SIDCがネットワークセキュリティに関する基本的な理解をしている会社であるならば、専門企業として、ここで高村課長補佐が指摘しているような懸念については心配いらないことを容易に説明できたはずであるのに、まったくしていない。これは「説明できない」からではなく、「説明しても無駄であることをわかっていた」からである。もともと、国の行政機関等から仕事を貰っている企業と官僚との力関係は歴然たるものがある。官僚の発言内容がいくら稚拙であっても、そのことを指摘し説得することなど、およそ企業にできることではない。ましてや本件におけるSIDCのように官僚を騙していた立場の企業としては、総務省=高村課長補佐の言葉は絶対的に従わざるを得ないものである。
11月9日の高村課長補佐と里吉・内田のやりとりは意見交換などというものではなく、高村課長補佐から里吉・内田に対する指示である。指示に従わなければ、総務省が後援から降りてしまうという危機的状況にあった。これは勧告そのものである。

3 適切なものへの修正
 被告は、「里吉らが、原告と打合せをして、内容を適切なものに修正させると述べるなどしていたことから、・・・本件要領4条4項2号に定める勧告を行うまでの必要は見受けられなかった」(3頁)と主張する。
 しかし、主催者が講演者の講演内容に自由に容喙できるなどという社会常識がそもそも存在しない。講演内容に関する批判が講演者に来るか主催者に来るかはそのときどきの事情によるが、基本的には講演者が自分の責任に行うものである。それまで原告に1度も会ったことのない里吉らが、外国のゲストスピーカーである原告の講演内容を修正させる(修正を命じる)ことなどできるはずがない。
 「内容を適切なものに修正させる」と言ったとしても、実際にどのようにすることが内容を適切なものにしたことになるのかは、具体的に詰めておかないと、総務省、主催者、原告の三者間で認識が合致しなくなるおそれがある。準備書面(5)で指摘したように、SIDC関係者は共同主催者であるドラゴスにはまったく相談しないで独断で高村課長補佐の要求を受け入れているのであるから、尚更のこと、高村課長補佐が適切な内容を明確にして提示しないかぎり、短時間のうちに主催者と原告の間で迅速的確に対応することはできない。
現にドラゴスは、高村課長補佐の要求に応じること自体に反発しており、SIDC関係者とはまったく認識を異にしている。
原告は、里吉らの説明を聞いて修正したつもりが、最初のものより更に悪くなったと指摘されている。このような事態になるのは、高村課長補佐の指摘が曖昧だからである。講演まで2日間余しかないという時期に、文書で問題点を指摘せず、口頭で指摘することは、第4条第4項第2号の規定を潜脱するものである。

4 「文書」による勧告
 本件取扱要領が、「文書により勧告すること」と明記しているのは、行政機関の意思を明確にすることにより、勧告された側が迅速かつ的確に対応できるようにすることと、行政機関の恣意を抑制することにある。
後者は、文書によらないと、結局のところ、言った、言わない、というレベルの話になってしまい、恣意的な指示を立証する責任が原告側にあるとすると、ほとんど立証不可能となり、行政機関の恣意を放置することになる。このような事態をなくするために、文書によることとしたものである。
 それを、講演3日前に文書によらないで行った指示を「意見交換」と表現すれば、勧告ではないとして、文書によらなくてよいとしてしまうならば、行政機関は今後も勧告はしないで、「意見交換」をしていればよいということになる。これでは文書による勧告義務の潜脱を許すのと同じである。
 高村課長補佐の指示は、文書により勧告すべきものを文書によらなかった重大な手続違反があるというべきである。
以上

Posted by Gohsuke Takama on July 4, 2006 at 05:01 PM | Permalink | Comments (0) | TrackBack