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Jul 03, 2004

Fahrenheit 9/11

アメリカで6月25日から公開されたマイケル・ムーアの「Fahrenheit 9/11」を見る機会があった。なぜか今までのムーアの映画に比べると真面目な作りという印象がある気がするのは、例の「アポなし取材」手法をあまり使っていないからかもしれない。また4月に起きたイラクでの日本人拉致事件も採録されているので、5月のカンヌ映画祭への出品ぎりぎりまで新しい材料を入れようとしていた印象もある。ただし、例によってスピーチの言葉尻などをサンプリングしてリピートする手法でチャチャを入れるのが、若干信頼度を落としてしまう気はするが。

映画は前半、2000年の大統領選挙で一度ゴアは当選のニュースまで流れたものがどのようにしてブッシュ当選になったのかを掘り返すところから始まり、9/11事件へのブッシュの行動を追い、さらにブッシュ家とサウジアラビアのビン・ラディン家との関係、カーライルグループと父ブッシュの関係、9/11調査委員会へのブッシュ政権の抵抗などを洗って行く。

その中では、インターネットに掲示されたビデオで有名になった9/11当日のフロリダの小学校を視察中スタッフに事件を耳打ちされたときのブッシュの反応や、アメリカ中の飛行機がすべて止められたはずの9/11後の3日間に、アメリカ国内にいた20人あまりのサウジアラビアのビン・ラディン家メンバーが国外に脱出する飛行機が飛んだ件、そしてそれに対する「証人喚問できるはずの人間をなぜ出国させたのか」という元FBIのアルカイダ担当捜査官の疑問を提示する。

しかし中半になると、ムーアはアメリカの貧困と戦争に送られる兵士との関係に焦点をあて、彼の出身地フリントに舞い戻る。放棄された家が建ち並ぶのを指して地元の人が「これは経済テロだ」と云う状況だ。そこでは失業率17%でしかも職のある人もいつ失うかわかならない状況にある。そんな環境下では、軍へ入ることに希望を託す人も多くいるし、かつ軍のリクルート員も活発に活動している事情をレポートしている。それに対比させてチェイニーとハリバートン社の関係、アフガニスタンを通るパイプライン建設計画、イラクの石油採掘を守るアメリカ軍の活動などを提示する。

そして後半になると、ムーアは、ある就職斡旋所を仕切っている女性を追いかけることになる。最初彼女は、兵役は国を支える仕事であると考え、自分の子供や親戚からも多数兵役に行っていることを誇りに思う、毎朝国旗を家に掲げる女性として紹介される。また彼女は戦争反対デモを行う人々を嫌い「彼らは戦争のコンセプトに反対しているのだ」と云う。

しかし彼女の息子がイラクに送られ戦死するところから彼女は急激に変化し始める。軍からの戦死を告げる簡単な知らせとそれより遅れて届いた戦地からの息子の手紙について語る、長いインタビュー。そこにイラクで家を爆撃され家族を失った人たちの泣き叫ぶ姿が対比される。そして彼女はワシントンDCを訪れる機会にホワイトハウスに向かう。しかし鉄の塀で守られたホワイトハウスの前で、彼女はそこが自分の怒りも悲しみもぶつけられる場所でないことを見いだしただけだ。

この映画は、たぶんアメリカ中部・南部の裕福でない、マスメディア情報に曝されている人たちに向けて作られているといえる。貧困と兵役を天秤にかけなければならない環境がある地域。そして、そのもう一方では石油企業と政府と軍の関係を洗い出そうとしている。しかし、ブッシュ批判を並べて反ブッシュ派の人たちの溜飲を下げることを目的とした政治プロバガンダ・エンターテイメント映画でもない。最後は自分で判断することが見る人に投げかけられているからだ。多数の重要な要素が採録されていないという批評もあるが、一度冷静に見てみるべき映画だろう。

Posted by Gohsuke Takama on July 3, 2004 at 04:56 PM | Permalink

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